北朝鮮最終殲滅計画

相馬勝『北朝鮮最終殲滅計画』、講談社+α新書、2006

駄本。まあいろいろ調べているということはわかる。しかし調べたことをただ並べただけでは本にはならない。そういうことのいい見本のような本。

著者はクリントン政権期の米軍の北朝鮮攻撃計画を取り上げ、アメリカが本気で北朝鮮を攻撃するつもりだったが、犠牲の規模を考慮して断念したという。その後でブッシュ政権期になってアメリカの態度はより強硬なものになり、戦争をも辞さない態度であるという。しかし、それならクリントン政権期に問題となっていたアメリカと韓国の被害についてブッシュ政権はどう考えているのか、イラク戦争の後始末ができていない状態で北朝鮮とさらに戦争をしかけることが現実的なのかどうか、著者は何も述べていない。読者の危機感をあおるだけあおって、肝心な部分のフォローが出来ていない。

中国の行動についても、金正日の首をすげかえて金正日の息子の誰かを後継にした傀儡政権を建てることが中国の目標だという。果たしてどのようにすればそんなことができるのか、金正日がいなくなった後で金正日の息子に軍や労働党が唯々諾々と従うのか、安定的な政権を樹立できる見込みはあるのか、ここでも肝心なことは何も書いていない。

著者はハーバードのニーマンフェローの資格で留学し、ノンフィクションで賞もとっているというが、それでこの程度のことしか書けないのか。本代はいいとして読んだ時間を返してもらいたい。