黒船の世紀

猪瀬直樹『黒船の世紀 【ミカドの国の未来戦記】』、小学館、1993

第二次大戦以前に日米で刊行された「日米戦争についての未来戦記もの」を扱う本。水野広徳の「次の一戦」はタイトルと簡単な概要だけは聞いたことがあったが、それ以上のことを知らなかったので、その関心で読んでみた。

単なる日米戦争予測の回顧ではなく、いろんなところに話が飛ぶので途中までなかなか自分の頭の中での焦点が結びにくかったが、読了してみて日本人論だということに納得。自分に都合の悪い事実を無視して、希望的観測を将来に投影する悪い癖は昔から出ていたんですね。司馬遼太郎の「坂の上の雲」と近い時期に読めたことはよかった。

最も印象に残ったのは、戦争計画と言うのは専門知識の集成というよりは多分に想像力の問題だという部分。バイウォーターのように航空機の発達という要素を考慮に入れていない予測でもおおよその部分は当たっている。またオレンジプランという形でそれを年々彫り込んで、必勝の体勢をつくってから現実の戦争に持ち込むアメリカはやはりあなどれない。山本五十六のハワイ奇襲は戦術的にすぐれた着眼であっても、それ自体は戦争計画とは違うものだから、両者を同列の次元では論じられない。