富岡多恵子集２

富岡多恵子『富岡多恵子集２　小説１』、筑摩書房、1998

タイトル通り、富岡多恵子の小説集。最初の小説、「丘に向ってひとは並ぶ」から、「動物の葬禮」までの作品が発表順に並べてある。

富岡多恵子は久しく読んでいなかったが、あらためて読んでみるとやっぱりいい。特に「丘に向ってひとは並ぶ」はタイトルからいい。他のもいいが、あとは「餓鬼の晩餐」「地蔵和讃仕方咄」あたりか。どの咄もあまり明るい話ではないのに、じめじめしていないところがいい。ほとんどの話で登場人物は大阪弁を話すが、どうも大阪の話という感じがまったくない。遠い遠い昔の日本か、おとぎの国のどこかであったことのようだ。登場人物にあまり人間臭が感じられず、むしろ動物っぽい臭いが強いことと関係があるのかもしれない。