八月十五日の神話

佐藤卓己八月十五日の神話』、ちくま新書、2005

八月十五日がどのようにして「終戦記念日」として認識されていったかという問題をメディアの観点から追った本。一部には知られていることだが、日本政府がポツダム宣言を受諾したのは八月十四日、軍への停戦命令が出たのは八月十六日、降伏文書への調印が行われたのは九月二日である。つまり八月十五日は正確には「玉音放送によって、降伏が国民に告知された日」なのだが、問題はなぜこの日が「終戦記念日」として認知されているかということだ。本書はこの問題を新聞、ラジオ、歴史教科書といったメディアを通じて丹念に追っている。

八月十五日の「記念写真」が実は「やらせ」らしいということはこの本で初めて知った。またソ連、中国が九月三日を対日戦勝記念日としていたこと、中国が日本の国内事情にあわせて八月十五日を戦勝のポイントとして重視する方向に移ってきていることも、本書で初めて知った。
また、記憶の形成の過程を追いかける著者の突っ込みは非常に面白い。歴史教科書を小中高と並べて時系列で全部整理した上でさまざまな論点を引き出す語り口も興味深かった。いろんな意味で新しい発見が詰まっている良書。