中華人民共和国史

天児慧中華人民共和国史』、岩波新書、1999

民共和国成立以後に焦点をあてた簡略な通史。特に文化大革命と改革開放政策の採用に焦点があてられ、比較的丁寧に書かれている。新書版、しかも200ページというサイズで中国の現代史を過不足なく書き上げるというのはそれなりに困難が伴う作業だと思うが、本書はその課題をかなりよく果していると思う。

またあとがきでは、将来(つまり1999年以後)の中国の方向性に対しての見通しが述べられているが、おおまかにいって外れていない。比較的最近の時期の中国が抱える経済問題も丁寧に説明されており、いろんな意味でためになる本。本書刊行以後に現代中国に関する概説書はいろいろと出ているので、刊行年が比較的古い本書ではカバーしきれない部分もあるが、それでも本書の価値があるとすれば、著者が長い中国史の中で、変わる部分と変わらない部分の関係にきちんと焦点をあわせることができているからだと思う。