ネオナチと極右運動

フランツィスカ・フンツエーダー『ネオナチと極右運動』、池田昭、浅野洋訳、三一新書、1995

ドイツの極右運動を概観した本。政党から、運動、ジャーナリズム、テロ行為、新右翼などについて、戦後まもない時期から90年代初めまで手広くサーベイされている。新書で160ページ程度(本文)しかない薄い本なので、それぞれの項目の記述が薄いことと、適切な訳注が付されていないという問題があって、やや読みにくいが、それでもドイツの極右運動を一瞥するのには役立つ。

一読して感じるのはドイツの極右運動に対する弾圧の厳しさだ。ドイツは「戦う民主主義」なので当然だといわれればそうなのだが、日本から見ると信じられないくらい頻繁に結社の禁止、出版、集会の禁止措置が出されている。しかも5%条項があるので小政党は議席をとりにくい。この状況で極右がこれだけ生き残っていること自体が驚きといえる。

逆に、フランスやオーストリアのような比較的極右が成功をおさめた国と比べると、ドイツの極右は分裂が激しく、政治勢力として小さい。たまに行われる示威行為以外に社会的影響力があるとも思えない。極右に対する公的な弾圧の厳しさを考えればこの程度にとどまっているのは当然という気もする。本書の記述はドイツ統一直後までのものなので、その後の状況についてある程度詳しく述べた本がほしい。