日本共産党

筆坂秀世日本共産党』、新潮新書、2006

元日共中央委幹部会委員、政策委員長だった著者の内部告発本。著者が高位の党幹部で内部事情を知悉する立場にあったことで、本書の記述は著者が直接見聞するか、当事者が著者にじかに語ったことが元になっている。本書の記述に非常に説得力があり、読ませる内容になっている理由はそこにある。

事実関係に関する記述では、宮本議長引退の真相と拉致問題に関する共産党の誤った判断の部分を興味深く読んだ。前者については、共産党のトップが円満に「降りる」ことがいかに困難かという点が印象深かった。また、後者については、いままでは拉致問題批判に加担することが国内政治的に右派を利することを恐れた判断だろうとおもっていたが、実際は不破議長が朝鮮労働党との関係正常化、日朝国交樹立の野心を持っており、それに対して拉致問題が邪魔だったという国際関係上の理由だったことが明らかにされており、非常に勉強になった。

一読して感じることは、共産党の問題の根本は「イデオロギーの無謬性」についての彼らの信念に発しているということだ。自分たちは絶対に正しいから、指導者の命令には絶対服従ということになるし、自分たちの誤りを認められず、間違った方針をとっても方針の転換が出来ない。社会環境は変わっても共産党は変わらない。このパターンが日共だけでなく、あらゆる共産党組織で繰り返されてきたことを考えれば、問題の根は単純だが深いと感じる。