新着と過去ログの物置

観光の哀しみ

酒井順子『観光の哀しみ』、新潮文庫、2003 酒井順子が「観光とはいろんな意味で哀しいものだ」というスタンスで、観光について書いたエッセイ集。酒井順子はいままで短い文章しか読んだことがなく、一冊読んだのは初めてだが、失敗。文章のスタイルが自分に…

図書館を使い倒す!

千野信浩『図書館を使い倒す!』、新潮新書、2005 雑誌記者の著者が、図書館を使った情報検索のノウハウについて語り倒した本。ネット検索についてはグーグルの知名度が上がるにつれて、いろいろなティップスが本にして出るようになったが、図書館を使った検…

朝日VS.産経 ソウル発

黒田勝弘、市川速水『朝日VS.産経 ソウル発』、朝日新書、2006 朝日と産経の朝鮮半島問題の看板記者が、韓国、北朝鮮関係の問題を取り上げて論戦する、という本。歴史問題、日韓両国のナショナリズム、北朝鮮が主なテーマ。よくも悪くも朝日的な立場と産経的…

背筋が冷たくなる話

谷甲州『背筋が冷たくなる話』、集英社文庫、2000 谷甲州のホラー短編集。いままで谷甲州はSFと山岳ものしか読んだことがなかったので、どういうものかと思って読んでみたが・・・。まあまあ。というか、あまりおもしろくないものとけっこうおもしろいものが同…

痴情小説

岩井志麻子『痴情小説』、新潮社、2003 「翠の月」「朱の国」といったように、各章に色のついた表題がついている(いくつかは原題を改題したもの)。で、「痴情小説」というタイトルの通り、全編にけっこう濃い濡れ場がついている。しかし岩井志麻子の他の小…

京都マル秘指令 ザ新選組

「京都マル秘指令 ザ新選組」、「脅迫4 金閣寺を赤ペンキで塗りあげるぞ!」、古谷一行、ガッツ石松、横山ノック、春川ますみ、京本政樹主演、1984 夜中にホームドラマチャンネルでやっていたので思わず見てしまった。や、安い・・・。お話もつくりもみな安い…

性の用語集

井上章一&関西性欲研究会『性の用語集』、講談社現代新書、2006 セックスに関するいろいろな言葉の用例の歴史を調べた本。「性」といえばセックスを連想するのは日本語圏ではじまったことで、それが20世紀になってから他の漢字使用圏にも拡大していったのだ…

貧困の克服

アマルティア・セン(大石りら訳)『貧困の克服』、集英社新書、2002 センの講演を4つ集めたもの。経済発展と民主主義に関するセンの基本的な立場がよくわかる。センの経済発展に関する関心が、人間に対する経済的エンタイトルメントを保障することを通じ、…

新書365冊

宮崎哲弥『新書365冊』、朝日新書、2006 創刊されたばかりの朝日新書のシリーズ第一弾の一冊。この最初の12冊の中では一番おもしろそう(他のはまだ読んでいない)。で、内容だが、宮崎哲弥版「新書1000本ノック」というもの。著者は毎月刊行される新書を全…

戦争責任と追悼

朝日新聞取材班『戦争責任と追悼』、朝日新聞社、2006 朝日新聞の連載「歴史と向き合う」のうち、戦争責任と追悼に関する部分を単行本化したもの。新聞の連載を一部書き換えて本にしたものなので、突っこみが浅いのはしかたないとはいえ、もうちょっとなんと…

ジョゼと虎と魚たち

「ジョゼと虎と魚たち」、妻夫木聡、池脇千鶴主演、犬童一心監督、ジョゼと虎と魚たち・フィルムパートナーズ、2003 これは名作。以前人からすすめられたが、上手でない説明をされて映画の内容について誤解していた。雀荘でバイトをしている大学生の妻夫木く…

話せぬ若手と聞けない上司

山本直人『話せぬ若手と聞けない上司』、新潮新書、2005 人材開発、というか企業内コミュニケーションで「若手」「新人」にどう接していけばいいかという本。いつもはこういう本は読まないのだが、なぜ買ったかというと著者が個人的に知っている人だから。し…

鷲の驕り

服部真澄『鷲の驕り』、祥伝社、1996 ダイアモンドに関する秘密の特許をめぐって、日米の政府、企業、マフィア、ハッカーらが入り乱れるというサスペンスもののお話。特許の何がどういう理由で秘密になっているのか、特許の所有者はどういう人物なのか、とい…

書中休み

「書中休み」、城土井大智主演、木下くみ作、江澤俊彦演出、NHKFMシアター、2006/12/9 大学受験に失敗してフリーター生活を続ける男が自分の現実を少しずつ受け入れていく、という話。大阪放送局の脚本懸賞入選作ということだが、おもしろくない。主人公はコ…

父親たちの星条旗

「父親たちの星条旗」、ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ主演、クリント・イーストウッド監督、アメリカ、2006 早く見に行かないと、と思っていたが、上映最終日にやっと行けた。明日からは「硫黄島からの手紙」が上映。お…

最後のタバコ論争!

大西祥一、株式会社G.B.編『最後のタバコ論争』、宝島社、2006 嫌煙論争について何か有益なことが書いてあるのかと思って買ったのだが、この本(本といっても128ページしかないが)、ちょっとひどくないか。というのは、表紙に載っている何人かの著名人にひ…

技術戦としての第二次大戦

兵頭二十八、別宮暖朗『技術戦としての第二次大戦』、PHP研究所、2005 主に陸戦兵器を中心に、日本と中国、ソ連、アメリカ、英連邦の四カ国との戦争(日中戦争、ノモンハン事件を含む)を技術史的観点から描いた本。個々の兵器の技術的側面だけではなく、戦…

綿矢りさのしくみ

小谷野敦、渡部直己、吉本謙次『綿矢りさのしくみ』、太田出版、2004 綿矢りさの「研究本」。著者の並び順は、小谷野、渡部、吉本だが、いちばん量を書いているのは吉本で、それから渡部、小谷野の順。まあよくあること。綿矢りさの「蹴りたい背中」がミリオ…

出世ミミズ

アーサー・ビナード『出世ミミズ』、集英社文庫、2006 アメリカ出身、イタリア語、タミル語、日本語を修めて、中原中也賞、講談社エッセイ賞をとった著者によるエッセイ集。こういう人に対して日本語をほめてはいけないのだろうが、著者の日本語学習の努力の…

炎上

「炎上」、市川雷蔵、中村雁治郎主演、市川崑監督、大映、1958 三島由紀夫の「金閣寺」の市川崑バージョンの映画化。市川雷蔵はこれが現代劇初主演とのことだが、ほんとうによく役にはまっている。どもりとそのコンプレックスが裏返しになって、驟閣寺(この…

スウィングガールズ

「スウィングガールズ」、上野樹里、平岡祐太主演、矢口史靖監督、フジテレビほか、2004 これも今頃見ているのかといわれそうな映画だが、アドレナリンドライブが面白かったついでに見てしまった。こっちもおもしろい。ウォーターボーイズもおもしろかったが…

アルジャジーラ 報道の戦争

ヒュー・マイルズ(河野純治訳)『アルジャジーラ 報道の戦争』、光文社、2005 中東の衛星放送局アルジャジーラの歴史についての本。報道の戦争という表題は原題にはないが、非常に適切なタイトルで、競争相手のほかの放送局との戦争、取材対象との戦争、戦…

アドレナリンドライブ

「アドレナリンドライブ」、安藤政信、石田ひかり主演、矢口史靖監督、アドレナリンドライブ製作委員会、1999 これはおもしろかった。安藤政信と石田ひかりがひょんなことからヤクザの裏金を手にしてしまい、ヤクザに追われて逃げ出すのだが、話はそううまく…

戦争の正しい始め方、終わり方

兵頭二十八、別宮暖朗『戦争の正しい始め方、終わり方』、並木書房、2003 ちょっと困った本。特に別宮のほうの記述に細かい不正確な内容が多すぎる。例えば前半部分では国際法の解釈。まず国際法の議論をするのなら、解釈の典拠を示すべきだし、先制攻撃が侵…

かもめ食堂

「かもめ食堂」、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ主演、荻上直子監督、かもめ商会、2006 夏くらいに公開されていた時には見逃してしまい、たまたま再上映していたので見ることができた。小林聡美、もたいまさこ、とくれば「やっぱり猫が好き」だが、荻上…

伊藤博文と安重根

佐木隆三『伊藤博文と安重根』、文藝春秋、1992 伊藤博文暗殺事件を公判記録に基づいて再構成したドキュメンタリーノベル。伊藤側と安側の両方から暗殺事件にいたる過程をていねいに描いている。 日露協商の再強化を図る伊藤に対して、安重根は確かに剛直、…

雪舟への旅

「雪舟への旅」、山口県立美術館、2006.11.1-11.30 雪舟の大規模な展覧会。雪舟の主な作品のほか、狩野派や横山大観の模写、雲谷派の作品まで幅広く集められている。これだけのものを集めて一ヶ月だけ、それも山口だけでほかを巡回しないとは、ほんとうにも…

若者殺しの時代

堀井憲一郎『若者殺しの時代』、講談社現代新書、2006 物騒な表題だが、週刊文春のコラムで知られた著者の80年代から90年代の時代と若者についての論集。80~90年代が取り上げられているのは、この時期に「若者文化」を商品化するシステムが完成し、若者が「…

男子の本懐

城山三郎『男子の本懐』、新潮文庫、1983 金輸出解禁政策をめぐる浜口雄幸と井上準之助の生涯を描いた城山三郎の代表作。しかし一読してみて、「そんなに傑作といわれるような作品なのか」という疑問を禁じえない。確かに浜口と井上の伝記小説としては、それ…

バロン

「バロン」、ジョン・ネビル、サラ・ポリー主演、テリー・ギリアム監督、アメリカ=イギリス=西ドイツ、1988 テリー・ギリアム監督の「ほら男爵の冒険」の映画バージョン。ジョン・ネビルはうまい。他の役者も達者ぞろい。なにげにロビン・ウィリアムズやデビ…