若者殺しの時代

堀井憲一郎『若者殺しの時代』、講談社現代新書、2006

物騒な表題だが、週刊文春のコラムで知られた著者の80年代から90年代の時代と若者についての論集。80~90年代が取り上げられているのは、この時期に「若者文化」を商品化するシステムが完成し、若者が「ゆっくり殺される」仕組みができあがったからだという。
80年代が「戦後」という時代の最後に来たひとつの区切りだったということは、よくいわれていることではあるが、著者のようにデータリサーチが得意な人が、そのことをいろんな形で示してくれると面白く読める。クリスマスやバレンタインデーについての雑誌記事の変化、NHK朝ドラの視聴率、サブカルチャーとしてのマンガ、事実のひとつひとつがとても興味深い。このような形で過去の事実を示されると、少し前の時期のことを、自分がまったく覚えていないということに驚く。1995年夏には携帯電話が1台9万円したという。携帯電話が爆発的に普及したのは97年以後のことだったのである。こんなことも全く覚えておらず、もっと早い時期からみんな携帯をもっていたかのように錯覚しているのだ。
結論部分は事実の裏づけが薄い分(なにしろ「これから」の話なので)、ちょっと説得力が薄いような気もするが、確かにいまの「若者」はきっと大変なんだろうなということには同意。