技術戦としての第二次大戦

兵頭二十八別宮暖朗『技術戦としての第二次大戦』、PHP研究所、2005

主に陸戦兵器を中心に、日本と中国、ソ連アメリカ、英連邦の四カ国との戦争(日中戦争ノモンハン事件を含む)を技術史的観点から描いた本。個々の兵器の技術的側面だけではなく、戦術、生産技術、将校の養成制度などにわたる幅広い面から論じられている。「戦争の始め方、終わらせ方」では文句ばかり書いたが、こっちは非常に有益な本。この本の議論の圧倒的な説得力は、細部にわたる数字、事実が全体として戦争の大きなイメージをつくっているところだろう。逆に細かい事実をよく知らない状態で、いくつかの断片的な事実から組み立てる印象論によりかかってしまうと、いかに結論を間違うかということも、この本の中では的確に指摘されている。しかし不思議なことは、この本が取り扱っている知識について知悉していたはずの帝国軍人が、なぜ技術面から見た戦争の敗因について俯瞰的な立場からの本を書いていないのかということ。この本でも典拠となっているのは、戦時中の資料と、日本人著者のものは断片的な回顧録ばかりで、これと同種の本が以前に書かれていた気配はない。