綿矢りさのしくみ

小谷野敦渡部直己吉本謙次綿矢りさのしくみ』、太田出版、2004

綿矢りさの「研究本」。著者の並び順は、小谷野、渡部、吉本だが、いちばん量を書いているのは吉本で、それから渡部、小谷野の順。まあよくあること。綿矢りさの「蹴りたい背中」がミリオンセラーだというのはこの本を読むまで知らなかった。世事にうといのがちょっとはずかしい。
吉本は「綿矢おたく」で、雑誌記事なんかも含めて、綿矢りさ関係の情報をやたら細かく集めている。この本全体でいちばんおもしろかったのは、吉本の「綿矢りさキーワード小辞典」。綿矢りさの写真はみたことないが、そんなにかわいいのか?巻末に「第2の綿矢りさをさがせ!」というタイトルで、早稲田のキャンパスで写した女子学生の写真がいろいろ貼ってある。って、これ綿矢りさとは何の関係もないような気がするけど・・・。まあいいでしょう。渡部直己の原稿は、綿矢りさのテクニックを「解剖」したものだが、ちっともおもしろくない。その後で、小谷野敦が、文学作品の善し悪しは美的判断であって、学問的に決まるものではないと堂々とかいているので、渡部の文章がよけいにズレて感じられる。
この本で綿矢りさ京都市立紫野高校出身というのを知って、ちょっと感慨深い。時期が時期なら、生活圏が重なっていたかもしれないね。