別人「群ようこ」のできるまで

群ようこ『別人「群ようこ」のできるまで』、文春文庫、1988

群ようこの、自分が作家になるまでの生活を綴ったエッセイというか、記録のようなもの。これがはじめての書き下ろしだったということだ(ちなみにオリジナルは1985年刊行)。時期的には1970年代後半から80年代前半くらいのことにあたる。バブル前の時期だが、全体的に明るいなあ。まあ著者本人が明るい人なので当然かもしれないが、本の雑誌社の周辺に集まる学生たちの話をみていると、就職状況が厳しくなる前、学生生活にずいぶんのんびりした雰囲気が残っていた時代の雰囲気を感じる。
もうひとつ思うことは著者の芯の強さ。雑誌の編集者から作家になった人たちは多いが、ただでさえ少ない自分の時間を原稿書きにあて、まがりなりにも安定している生活を捨てて、作家専業という不安定な職につくのは、なにがしか強い動機や決意のようなものがないとなかなかできないことだと思う。群ようこは本人のなごみ系のキャラが目立っている人だけど、本人は非常にはっきりした人なんだろうと思う。