ヴァイブレータ

赤坂真理ヴァイブレータ』、講談社文庫、2003

以前見た寺島しのぶ主演の映画の原作なので手に入れて読んでみた。主人公の内部の記憶の部分がけっこう書き込まれていて、そこが映画では省かれているということがわかる。まあそれはそれでありか。しかしその部分が入っているのといないのとではだいぶ違う話になっている。中学生時代の主人公を昔いじめた教師のエピソードが入っていることで、そういう主人公の傷を4日間の旅が埋めていく話になっているわけですね。あと、トラックの運転手は映画を見たときに感じたひっかかりがなくなって、読んでいてすっと受け入れられるような感じになっている。これは、自分がヤクザっぽい感じが嫌いなので、絵として見せられるより、文章で出されたほうが抵抗感が少ないだけかもしれない。あと、表紙の装丁がいい。アメリカのガソリンスタンドの写真のようだが、赤いスタンドのサインと、夜明けの薄明かりのコントラストがきれいにかみ合っていて、とてもすっきりした感じ。読んでみて、それなりにほっとする。