無の探求<中国禅>

柳田聖山、梅原猛『無の探求<中国禅> 仏教の思想7』、角川文庫ソフィア、1997

角川の「仏教の思想」シリーズの7巻。中国における禅の変貌を扱う。最初に柳田聖山の論文が来るが、これはある程度実際に禅をやっているか、かなり禅の語録を読んでいないとついていけない。次に柳田と梅原猛の対談がきて、最後に梅原猛の比較的読みやすい論文がくる。しかし本書の中心はやはり巻頭の柳田の論文で、ここで柳田は西田幾多郎鈴木大拙が行った「無」を中心とする禅のあり方をいったん棚上げして、そこにいたるまでの禅の形成をインド仏教にさかのぼって再構築しようとしている。
読むのには非常な腕力が必要で、自分には全部はとてもフォローできないが、それでも南宗禅に対する北宗禅の意義、慧能の位置づけ、日本禅宗の禅の系譜の中での位置など、自分がまったく知らなかったことを多く教えられた。オリジナルは1969年刊行だが、いまなお古さを感じさせない本。