ピンクのチョコレート

林真理子『ピンクのチョコレート』、角川文庫、1997
林真理子の短編集。話はどれも似たようなもので、お金、贅沢、セックス、恋愛と女の子がからむ話が次から次へと続く。雰囲気は昔テレビで見た「バブルと寝た女たち」(家田荘子の本ではなくてそれをドラマ化したやつ)そっくり。単行本の最初の刊行は1994年なので、すでにバブル景気ははじけた後だが、本の中身はまるで泡風呂のようだ。
はっきりいって自分にはまったく興味をそそられない内容だが、こういう話にリアリティを感じる人はけっこういるんだろうなあ。なお最後に置かれている連作「勤め人のいえ」だけは、それまでの話とかなり感じが違い、少しおもしろく読めた。
巻末に山本文緒の解説がついているが、これがまた思い切り外している。そもそもこの本の主人公たちは「自分の人生を自分で選ぶ」ことなどに高い価値をおく人々だろうか。この本に値打ちらしきものがあるとすれば、そういうつまらない説教から距離を取っていることくらいだと思うが。