陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り

兵頭二十八、旗谷嘉辰『陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り』、並木書房、2006

表題を見ると日本刀の話題のみに集中しているように見えるが、実際は刀以外の打物、馬、弓矢などを含めた古武術全般に関する対談本。旗谷嘉辰の名前は知らなかったが、陸軍戸山学校で教育された剣術を受け継ぐ戸山流の師範で研ぎ師でもあるという。「剣道」ではなく、真剣で実際に物を斬ることを実践している人だけあって、人間を実際に殺すための術としての剣に精通している。また馬や弓矢など体験に裏付けられた幅の広い知識には驚くばかり。兵頭二十八も「軍学者」の面目躍如で、この組み合わせあってこその面白い対談になっている。戦時中の日本陸軍による軍刀の使用法の問題点から、鎌倉期より江戸期、明治にいたる武術の変遷まで、目からうろこが落ちるような話ばかり。しかも非常に読みやすい。価値の高い一冊。