最終戦争論 戦争史大観

石原莞爾『最終戦争論 戦争史大観』、中公文庫、1993

石原莞爾IMEでこの名前が一発変換されたのには驚いた)の代表的な論説を集めた本。講演筆記を元に将来の最終戦争の形態を説いた「最終戦争論」と戦史研究に基づき、戦争形態の変化と現在の日本の国防について論じた「戦争史大観」からなる。
決戦戦争と持久戦争の交替という説に基づいて戦争形態の変化を説明し、さらに世界各国のブロック化による圏域形成が、米州圏、欧州圏、ソ連圏、東亜圏に世界を分割させ、最後にアメリカを中心とする米州圏と日本を中心とする東亜圏が覇道対王道というイデオロギーの戦争としての世界最終戦争を戦い、その結果として世界は統一され、永久平和が訪れるという「最終戦争論」。石原の軍事的識見に基づく予測は、この中では軍事技術の発達(航空機の発達、強大な破壊力をもつ決戦兵器の開発)によって決戦戦争としての世界最終戦争が戦われるという部分で、それ以外の部分は、石原の勘と日蓮信仰などから出てきたいわば大法螺の部分である。しかし大法螺の部分も含めて、もちろんいくつかのハズレはあるものの、大局的な見通しとしてけっこう当たっている部分が大きい。これだけの巨視的な見通しを立てた上で戦略をつくるという姿勢も含めて、石原のすぐれたところだろう。もっとも、石原の予測をそのまま政策に反映させて国家戦略としていくと、日本が、いろんな意味で、ほとんどソ連と変わらない国になっていくようにも思えるのだが・・・。
全体主義対民主主義」の対比も含めて、当時の思考法についてもいろいろ得るところが多い本。しかし、この本は時代を理解するためというよりは石原個人を理解するための本だから、石原個人の評伝をあわせて読む必要があると感じる。