あたらしい武士道

兵頭二十八『あたらしい武士道』、新紀元社、2004

兵頭二十八の「武士道」についての本。著者はヨーロッパにおける「市民」=自己の安全を守る能力を持ち、かつ共同体の防衛に参加できる者、と考えているので、武士道の探求とは著者にとって「日本に西洋的な意味での市民を確立するためのプロセス」ということになる。著者のいう「あたらしい武士道」が具体的にどういうものなのかは、明示的には語られず、それは読者が考えろということのようだが、日本における「武士」のあり方を、西洋の騎士や儒教の教説との対比の上で描き出すやり方は十分おもしろく、勉強になる。特に武士道を江戸期半ば以降に限定せず、武士の成立に先立つ時期から、非常に広いスパンでとらえていることは、著者ほどの博識の人でなければなかなかできないことで、それが本書の重要な価値になっている。