キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか

北尾トロ『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』、幻冬舎文庫、2006

ライターの北尾トロが、「やってみたかったけど、今まで出来なかったことを小さな勇気を出してやってみる」という企画で書いた体験ルポ。おもしろかったのは、「子供と遊びたいと思うのは犯罪なのだろうか」「ウィンズでたむろする席取りオヤジに着席権を主張する」「人前で自作の詩を朗読する」「好きだといえなかったあの女性に23年のときを超えて告白する」「消えたフリーライター持馬ツヨシの行方を追う」あたり。高校生のときに好きだった女に23年後に告白したら「自分も好きだった」と言われた、というのはちょっとほのぼの、ちょっとフェアリーテイルのような感じで楽しいね。しかし一番おもしろかったのは、最後のフリーライター失踪のてんまつか。人一人消えてなくなったことで、その人の、誰も知らなかった陰の部分がどんどん暴かれていく、というのは、のぞき趣味ではあるが、ツボをついている話。北尾トロは、裁判傍聴記しか読んだことがなかったけど、いろいろ書いてるのね。ほかの著書も探してみよう。