辺境の惑星

アーシュラ・K・ル・グィン脇明子訳)『辺境の惑星』、ハヤカワ文庫、1989

これもル・グィンの初期の一冊。オリジナルの刊行は1966年。遠い未来、人類は全世界連盟を結成して広く宇宙に進出しているが、竜座の第三惑星に殖民したひとにぎりの人間はそのまま本体と連絡が切れてしまい、連盟の規則によって、現地で使われている以上のテクノロジーを使えないままにかつての知識も忘れ去られようとしている。そこで、その惑星の原生人類との間にトラブルや同盟が起こるのだが、交配ができないはずの原生人類の娘を植民者のリーダーが妻としたことで、事態は大きく展開していく、というような話。翻訳者はあとがきで、人間性に対する楽観性が強すぎて話の底が浅くなっていると批判しているが、自分としてはこういうパターンのお話も十分アリだろうと思う。原生人類の長老ウォルドがとてもいい味を出している。ストーリーテリングも上手い。「闇の左手」「所有せざる人々」ほどの深みはないとしても、これもまぎれもなくル・グィンの一冊。