最新刊

中野翠『最新刊』、文春文庫、1993

著者の時事コラムのうち1988-89年分をまとめたもの。この年は昭和天皇崩御の年で元号が切り替わったから、もう18年前ということになる。感じとしては昔のニュース映画(古すぎか・・・)を引っ張り出して見せられているような感じだが、この手のエッセイはリアルタイムで読むか、とても長い時間がたった後で読むのがちょうどいいと思うので、その点は問題なし。
出てくるネタは、昭和天皇ご不例から崩御までの長い時間の経過、第二次天安門事件、アグネス・チャン論争、美空ひばり手塚治虫の死去、横山やすしの吉本解雇、89年参院選での「マドンナブーム」、女子高生コンクリ殺人事件、宮崎勤連続幼女殺人事件などなど。どれもなんかもう歴史上の事件という感じだが、天安門事件についての中野翠のナイーブな反応には驚く。この部分だけコメントの内容も非常にくだらない。読めば、中野翠全共闘世代の一人で、ノンセクトではあっても街頭デモに繰り出した口なのだという。この世代の人で、中野のように自分の体験を相対化できていない人は多いんだろうなあ。まあ大きな歴史的事件の体験というのはみなそういうものなのだろうが。