天下統一 ─秀吉から家康へ

黒嶋敏『天下統一 ─秀吉から家康へ』講談社現代新書、2015


豊臣政権から徳川政権初期の、日本外交について考察した本。非常におもしろかった。

秀吉の朝鮮出兵は、直接の理由は「服属しない朝鮮の征伐」だが、明との通交が目的で、明からの「日本国王への冊封」が重要だった。冊封は臣従を意味するから秀吉はそんなものは拒絶したはずでは、と思っていたが、そうではない。秀吉は、冊封の使者を歓迎していたし、明皇帝から下賜された衣服も大事に保存していた。それは冊封が、「天下人としての秀吉の威令を強める」と認識されていたから。

その事情は秀吉死後も簡単には変わっておらず、家康も明との通交(日本国王としての冊封)を目指しており、そのための手づるとして琉球を使おうとしていた。また、明が応じない場合には、朝鮮再出兵をちらつかせたり、明沿岸部への「倭寇」襲撃も辞さない態度だった。秀吉が家康に代わっても、外交の基本的な目的と意味はあまり変わっていなかった。

しかし、時間が経って、徳川家の支配が安定してくると、明からの冊封を体制安定化の道具として使う意味は薄れてきた。そこで家光の海禁政策につながっていくが、それ自体も明の海禁政策のマネ。

朝鮮出兵の事情や、琉球出兵の意味、それらと国内体制の関係について、自分が全然わかっていなかったことが書かれていて、とにかく驚いた。中世史や近世史も昔の認識で適当に済ませていてはいけないのだ。