「城取り」の軍事学

西股総生『「城取り」の軍事学学研パブリッシング、2013


同じ著者の『戦国の軍隊』がおもしろかったので、こちらも読んでみた。かなりおもしろい。

こちらが城郭研究についてほとんど知らないので、読みどころばかり。城郭史は、中世史の中でも深く研究されている分野で、研究者もたくさんいる。郷土史ともつながっているので、地道に城郭を発掘したり歩いていたりする人が多くいるのだ。

この本のタイトル「城取り」が、「城攻め」のことではなく、城郭建設のことだということも知らなかった。しかも、この本で著者が書いているように、戦国時代の初めから近世にかけて、山城、平山城、平城と移行するという説は不適切だということや、近世城郭は高石垣と天守を持つとは限らないということもわかっていなかった。

著者の言うところでは、城はあくまで軍事施設で、近世に築かれたものであっても、単なる「統治の象徴」ではなく、目的は防衛。大量に築かれた城、防備施設として弱く見える城も、よく観察すれば、防衛上の必要と建設のコストが見合うようにつくられている。全国で残っている城跡は、4万から5万あり、そのうち近世城郭は数千を出ない。防衛施設としての城郭の見方がわかれば、中世城郭でも近世城郭でも、きちんと見られますよというのが著者の教えてくれるところ。

城の縄張り図の見方に少し慣れたことも収穫。夏は時間を見つけて、郡山城行くわ。