戦国の軍隊

西股総生『戦国の軍隊 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』学研、2015


戦国期の「軍隊」についての考察。動員体制、兵種別編成の有無、鉄砲(鉄炮)の数と用兵、侍、足軽、雑兵、小者、軍夫の別、兵站と略奪、兵農分離の真偽、織豊軍が勝利した理由など、多岐にわたる内容。

論争は続いているのだろうが、兵種別編成は「あった」ということについては、この本の説明でほぼ納得できた。動員は、領主ごとにバラバラであっても、主君の下に着到した時点で、兵種別に編成し直されている。侍身分の者は、兵種別の部隊長を務めるだけでなく、侍だけ(小者や口取り含む)で戦闘に従事する。

とはいえ、兵種別の部隊は臨時編成なので、これを訓練することはむずかしい。だから「鉄炮三段撃ち」のようなことはできない。騎馬だけで戦闘をしかけることはあっても、集団的な騎馬戦はむずかしい。

小田原の役で、豊臣軍は十分な補給ができたのか、という問いの答えもだいたい納得。当然補給はしていたが、豊臣軍の能力で末端まで補給を行き渡らせるのはムリ。結局、敵地で略奪していたことは他の戦いと同じ。

織豊軍が組織としては、他の大名の軍と変わるところがなかったことや、織豊軍の強さは結局、指揮官の能力と兵力に帰着するという説明も納得。損害と補充を繰り返していたから、結果としてもともと身分の低い者も積極的に登用せざるを得なかったので、それを現代からみれば「能力主義」と見えるということ。

戦国史の重要な部分について、軍事史を踏まえた説明になっている。本の性格上、引用文献リストが十分でないのは、ガマン。