忍者の歴史

山田雄司『忍者の歴史』KADOKAWA、2016


タイトルの通り、「忍者の歴史」をできるだけ、「忍術書」の内容に即して書いた本。

忍者が少なくとも中世以来はいたこと、主な任務は諜報活動だったということはわかる。「孫子」にいう「生間」。しかし、それをどうやって実行していたかということになると、この本を読んでもいまひとつ腑に落ちない。

堀を渡り、塀を越えると言っても、特別な方法があるわけではない。身体を鍛えるといっても、限度がある。薬を使えば闇夜でもものが見えるというのだが、その薬というのが「樟脳、龍脳、雷で焼けた木炭」を混ぜて、目に塗るというもので、そんなものを目に塗ったら、見えるものも見えなくなるとしか思えない。

というわけで、「忍術書」そのものがあてにならないとしかいえないのだが、江戸時代になっても(17世紀くらいはともかく、18世紀以後も)忍者は警備などの名目で残されていて、探索業務を行っていた。「伊賀者」は、実際に伊賀出身の者かどうかは関係なく、探索業務を行う者に与えられていた身分。幕府だけでなく、諸藩にも忍者はいた。

忍術道場や忍術流派(藩ごとにある)もあった。何を教えていたのかはよくわからない。

明治以後は、中国由来の妖術、幻術と組み合わされて、歌舞伎、映画、小説などの忍者イメージが形成された。後は個人で忍術継承者を称する人が、その技術を他人に見せたり教えたりしていたというおはなし。

どこまでが創作でどこまでが事実か、よくわからないが、読み物としてはおもしろい。当然ながら、忍者が暗殺や襲撃に関与したとは書いてない。それはないだろう。