歴史をつかむ技法

山本博文『歴史をつかむ技法』新潮新書、2014


これはタイトル通り、歴史を全体的に把握することの重要さ、歴史学の言葉の使い方、歴史学と他の方法(歴史小説)の見方の違い、などに触れた「歴史学の考え方」を紹介する本。同じ著者の『格差と序列の日本史』に、こちらとセットで書いているので読んでほしいとあったので、読んでみた。これも良書。

歴史用語、時代区分、歴史の法則性といった高校教科書には説明されていないが重要な概念について説明している。この本自体が、高校の日本史教科書を補完して、歴史学について考える材料を提供するという趣旨のものなので、非常にわかりやすい。高校教科書は授業で補足することを前提としているので、それだけ読んでもわかりやすいものではないと述べているがそのとおり。

最後の章では、「司馬史観」、「自由主義史観」を、その支持者たちをあまり怒らせないよう、上手に批判している。著者は、歴史学者なので、「歴史は創作ではなく事実」ということを述べているだけなのだが、そういう前提に立たない人を説教ではない形でちゃんと誘導できている。

ついでに歴史から「教訓」を学ぼうとする態度についても、「現在の見方を機械的に歴史にあてはめて教訓を引き出そうとすることの問題」を説明している。「歴史ブーム」について、プロの立場から、やんわりと学問の立ち位置を語るもの。著者は、人間ができている人。