戦国武将の明暗

本郷和人『戦国武将の明暗』新潮新書、2015


本郷和人の戦国本。エピソードの落ち穂拾いみたいな形式だが、史料の読み解きに沿って話を展開するという原則は踏み外していない。しかもおもしろい。

第1章から、第3章までが「関ヶ原考」になっている。ここでは、関ヶ原で上杉軍が徳川軍の後を追わずに北転したような、結果から見ればまるで戦略的ではない行動の理由が、「群雄割拠の戦国時代の意識はまだ続いていて、地方勢力は地方で自領を拡大することを第一に考えていたから」という説で説明している。

第10章と第11章は徳川家康による、大名への論功行賞を扱っているが、基本的には戦功に応じて公正に行っているように見えながら、自分と縁組した婿には余分に土地が配分されていて、「そういうルール」になっていたという。縁組による加増も統治の方法なので、それは納得。

日本が畿内、中部、中国、四国からなる「中心」と、関東以北、九州という「周辺」からできていて、その両者には明確な区別があることや、戦国期の男色、女たちから見た戦国など、勉強になることばかり。この本でページを割いている井伊直虎は、ちゃんと大河ドラマの主人公になっているし。さくっと読めて、お得な本。