格差と序列の日本史

山本博文『格差と序列の日本史』新潮新書、2016


タイトルはこうなっているが、実質的には日本史上の「国家機構と官僚制度の概説」。

律令制とその後の変遷が中心だが、江戸時代のところが一番詳しく、読みがいがある。著者の専門だからあたりまえ。この部分は、知らないことばかりで、非常に勉強になった。江戸幕府内部の昇進や武士の格付けについて、初期から幕末までていねいに書いている。

それ以前の部分も、大まかなことを押さえた上で、どこが時代ごとに変化したかという「つなぎ」の部分を説明することに注力していて、これはよい書き方。

日本史の復習または頭の整理にとても役に立って、よかった。しかし、現代の部分になって、いきなり「格差」を強調するのはどうなのか。それまでは、「官」内部の話しかしていなかったのに、ここでいきなり都市と農村の格差とか、庶民レベルの格差の話が出てくる。

それなら、古代から官と貧民、富裕層でどの程度の格差があって、どう変化したのか書いてもらいたいと思うが、一冊に多くを求めるのはむりか。