流れをつかむ日本の歴史

山本博文『流れをつかむ日本の歴史』KADOKAWA、2016


山本博文の「日本史全部の概説」本。あまり細かいことに振り回されず、大づかみに全体のことをわかることが大事という著者の考えには同意。実際わかりやすい。高校の日本史教科書みたいなものを読むよりは、こちらのほうがよほど内容が頭に入るだろう。

特に幕末史はよく書けていて、徳川慶喜がどこで失敗していたのか、小さな決定がどのくらい影響を及ぼすのかについて、よくわかる。著者の得意分野では、大ざっぱなことを書いていても、小技をきかせられるのだ。

とはいえ、それでまあいいかと思えるのは、幕末まで。明治以後、特に日清戦争日露戦争韓国併合あたりからは、著者の立場がはっきり出ていて、この記述には納得しない歴史学者が多いだろうと思われる。近代史はそういうものといえばそれまでだが、著者の政治的立場がはっきり出ざるをえない。

満州事変、日中戦争から太平洋戦争までの部分はさらにそう。まあ倉山満の本から引用するというのはどうなのよ。引用元の吟味というのは大事だと思うが・・・。本の性格上やむを得ないことなのかもしれないが、参考文献リストもなし。日本史のような細分化されすぎている分野で一人で概説書を書くという試みはやはり大変なのか。いろいろと考えさせられる。