戦前日本の安全保障

川田稔『戦前日本の安全保障』、講談社現代新書、2013


山県有朋原敬浜口雄幸永田鉄山の4人に焦点をあてて、彼らの外交、安全保障構想をまとめた本。なぜこの4人なのか、という疑問はあるが、重要人物であることはたしかなので、読んでいてためになる。

原と浜口はかなり考え方が似ていて、軍縮、対米協調、連盟重視でなんとか穏便にやっていくというもの。とはいえ、アメリカもそんなに信用はできず、下手をするとアメリカのいうがままに振り回される可能性はあるのだが、そこは連盟やワシントン体制の九カ国条約でアメリカを抑えようとしていた。しかし、大恐慌満州事変、原と浜口の暗殺で、彼らの構想は実現できなかった。

山県は、日露同盟と中国への勢力圏拡大志向。これは第1次世界大戦とロシア革命で挫折。

永田は連盟はあてにしていないので、自強と世界大戦への準備を志向。工業化と中国への進出による資源利権の確保をめざした。これが満州事変で実現するが、永田自身の暗殺で頓挫。

4人の考えていたことはそれぞれにはおもしろいが、その関係がいまいちつながらないので、戦前日本の安全保障の全体像が描けているかといえば、微妙なところ。巻末の文献解題は役に立つ。