日本史のまめまめしい知識 第1巻

日本史史料研究会編『日本史のまめまめしい知識』第1巻、岩田書院、2016


新書サイズの日本史の本。しかし、270ページくらいの本なのに、33編の論文がある。正確には、論文というには少し短いサイズで、注も厳密ではなく、各編の終わりに文献リストがあるのみ。巻頭には「短編集」だと書いてある。

しかし、概説的な論文ではなく、どの論文も、細かいテーマを扱う日本史の論文。時代も対象もバラバラで統一性はない。「日本史研究者は、このようなことをしています」という見本を並べたという本。一般の読者が全部の論文に目を通すことは想定されておらず、興味を持った部分を読んで下さいという趣旨。

そういう内容だが、けっこうおもしろい論文が多かった。「室町幕府滅亡後の幕臣達」、「室町幕府において将軍直臣に対して将軍以外が名前の一字を与えること」、「「合戦」か「対陣」か─「小河台合戦」の呼称について」、「皇位継承前における「親王」」、「法名道号房号─僧俗の仏教称号雑感」、「乗り合い殺人事件─鎌倉後期における御家人制の実状」が、第一部の「歴史の常識」に収録されている論文の中でおもしろく読めたもの。

第一部には12編収録されていて、そのうち6編おもしろく読めたのだから、これは当たり。第二部や第三部も、半分か三分の一くらいの論文はおもしろく読めた。まるっきりバラバラな論文集が、ちょっと歴史が好きというくらいでもおもしろかったのだから、企画が当たったということ。

もちろん、自分の興味と合致していることが大事だが、各編が短いということが大事な要素。サクッと読めるし、読めないものは気軽に飛ばせばよい。こういうところで食いつきやすいのが馬鹿にできない要素。

北条時行」(中先代の乱の人)が、「ときゆき」ではなくて「ときつら」と読むのが正しいとか、いろいろ勉強になったわ。言われてみれば、「楠木正行」は、「まさつら」であって「まさゆき」とは読まない。

第1巻となっているので、これが売れれば、さらに続編も出るのだろう。出るといいな。