信長

坂口安吾『信長』、宝島社、2006

原著の発行年は、1953年。いまごろこんな出版社から出るのは、2005年が安吾没後50年で著作権が切れたということだろう。元は1952年から53年の新聞連載だというが、驚くのはこの小説、桶狭間で終わってしまうのである。しかも桶狭間のところは明らかに書き急いでいるような筆の運びで、もともとここで終わる予定ではなかったのではないか?内容は、斉藤道三の描写や弟信行(勘十郎)を擁した林、柴田らの反乱あたりはよく書けているが、全体として坂口安吾の小説の中でよくできている方ではないと思う。やはり尻切れトンボみたいな終わり方は気にかかる。でも安吾らしいところは(信長の台詞回しとか)それなりに出ているから、気楽に読めたのでまあいいか。