傭兵の二千年史

菊池良生『傭兵の二千年史』、講談社現代新書、2002

古代ギリシャから近代初期までの傭兵史を一瞥した本。しかしほとんどの記述は中世から近代にかけてのヨーロッパにおける傭兵史なので、タイトルはややミスリーディングのような気もする。

内容は十分おもしろい。スイス傭兵やドイツのランツクネヒトの歴史に続き、マウリッツの兵制改革、三十年戦争における傭兵隊長の興亡、ルイ十四世の常備軍、海外植民地と傭兵、ナポレオン戦争と国民軍といった事柄が順を追って要領よく叙述される。中世騎士から傭兵、常備軍、国民軍への流れがどういう経緯をへて進行したのか、いままで理解が不十分だったが、この本でだいたいのことがわかった。

しかし傭兵に対する著者の妙にロマンティックな思い入れにはちょっとついていけない。「死と隣り合わせの場所にしか自己実現できない彼ら(傭兵)は悲しい人間たちでもある」というのは大きなお世話というか、単なる思い込みだろう。