北朝鮮報道

川上和久『北朝鮮報道』、光文社新書、2004

駄本。著者自身がいっているように、著者は北朝鮮問題の専門家ではなく、メディアの専門家である。ところが、本の内容は北朝鮮と日本の関係についての事実やそれに関する報道の内容を単に羅列しただけであって、それに対する著者の分析がない。朝日新聞(他のメディアもだが)が、北朝鮮の提灯持ちをしていたということは、この問題について知っている人には当然の事実であり、メディア研究者なら、「なぜ朝日を含めた日本のメディアは、北朝鮮に対して批判的な視点をもつことができなかったのか」について分析をするのが仕事だろう。また、三章「議員訪朝団は何をしたのか」、四章「テロ国家のメディアコントロール」は、そもそもメディアの報道というより、北朝鮮に対する日本の議員外交や北朝鮮側の日本に対する外交戦術の批判である。だいたい北朝鮮が自国の都合で日本を利用したり、社会党(や自民党の一部)がそれにホイホイついていくのはあたりまえのことで、なぜそういうことが成功してしまうのかという理由を考えるのが研究者の仕事ではないのか。自分の感情的な鬱憤を晴らそうとすることと、研究者としての立場の区別がついていないのである。