海の仙人

絲山秋子『海の仙人』、新潮社、2004

絲山秋子の中編。宝くじをあてて会社を退職し、敦賀で釣りをして暮らす河野勝男が、離れて暮らす恋人の中村かりん、会社の同僚だった女、片桐、どこからともなく現れる「ファンタジー」とからむというお話。河野の力の入らなさがとてもいい感じ。河野の無力さと対照になる片桐の強さ、最期になるまでぎごちないかりんとの関係、その他諸々をファンタジーがちょうどよく引き取って中和している。重いエピソードもドロドロせず、軽いエピソードもフワフワしない。明るい終わり方では全然ないのに読後感がさわやか。人間死ねば煙と灰だね。