「戦艦大和」と戦後

吉田満保阪正康編)『「戦艦大和」と戦後』、ちくま学芸文庫、2005

戦艦大和ノ最期」を含む、吉田満の文章を集めたもの。読んでみて驚いたのは、わたしが昔読んだ「戦艦大和ノ最期」とは内容がかなり違っていること。わたしが読んだのは初出テクストのほうだったのだ。こちらは終わりが「乗員三千余名ヲ数ヘ、還レルモノ僅カニ二百数十名 至列ノ闘魂、至高ノ錬度、天下ニ恥ヂザル最期ナリ」で終わっている。決定稿のほうは、「今ナホ埋没スル三千ノ骸 彼ラ終焉ノ胸中果シテ如何」となっている。内容にも相当加筆があり、読後感はかなり違う。さらに驚かされたのはこれが「戦争賛美の文章」だという非難にさらされたということ。また、著者がそのことに非常に反発を感じていて、「戦艦大和ノ最期」の後で著者が書いた文章は、基本的に戦争責任の問題を戦争反対の立場から考えようとする立場に立っているということである。おそらく「男たちの大和」などは著者からすると最も受け入れられないものなのではないだろうか。

文章は見事。「戦艦大和ノ最期」は、戦後に書かれた文語文の中で間違いなく、最も優れた文章の中に入ると思う。