自民党を壊した男

読売新聞政治部『自民党を壊した男 小泉政権一五○○日の真実』、新潮社、2005

自公連立、民主党、04年参院選、政策決定過程の変化、自民党の変貌の5点から、政治状況全体の変化を描こうとする本。小泉内閣そのものに焦点が当たっているのは政策決定過程の変化のところだけだから、タイトルはミスリーディングである。しかし広い意味で小泉政権以後の政治的変化をいろいろな視点から見ようとしているわけだから、本の趣旨そのものはそれでいい。ただし、出版時期の関係で郵政民営化の政争と解散総選挙は扱われていないので、その点は注意。

印象としては、自公連立はまず別れられない状態になっているので、総選挙で負けるまで連立は維持されるだろうということ。あまり定量的な分析はされていないが、この本に書かれているような状態では、自公両党の「融合」は進む一方で、選挙の関係でその関係を切るデメリットが双方にあまりにも大きいから、切れない。もうひとつは民主党は(小沢代表になってからのことは当然扱われていないが)、かなり根本的にやり方を変えないと、このままでは連立政権側によほど大きな失点がない限り政権は取れないだろうということ。05年総選挙での敗北はある意味起こるべくして起こったことといえる。消費税引き上げが今後あれば、民主党にとっては大きなチャンスになるだろうが、民主党自体がかなり変わらないと政権運営は非常に危なっかしいことになると思う。