開国・維新

松本健一『開国・維新 日本の近代1』、中央公論社、1998

中公から出ている「日本の近代」のうち通史部分8巻の最初の巻。他の維新史概説と異なるところは、「日本において、パトリオティズムがどのように現れ、成立するに至ったか」に焦点をあてていることにある。そこで、佐久間象山、水戸学、奇兵隊、草莽といった要素に焦点があてられ、薩摩や長州の藩内事情や幕府、雄藩間の政治闘争、幕末の経済混乱と農民-武士の階級的対立といった問題には類書と比べるとそれほど強調がなされていない。これはこれで、本書の特色としてアリだと思う。

興味深いのは、当初外国に対する主な関心が「海防」であり、それは攘夷とつながる要素を強くもっていたものが、どうやって「究極的攘夷の手段としての貿易、開国」に転じ、それが「万国公法に則した国際社会の一員になるための開国」「富国強兵」へと転じていく過程である。このあたりの変化は暗殺その他による人の交替と環境の変化による意識変革の両方があって、統一的な把握がむずかしい。また維新後に書かれたものでは、この問題を見ていくのに十分でなく、同時代に書かれたものをきちんと読む必要を強く感じる。