歴史和解の旅

船橋洋一『歴史和解の旅』、朝日新聞社、2004

著者の週刊朝日のコラム「世界ブリーフィング」の中から、歴史問題とその和解に関係する文章を採録した本。ほとんどは既に単行本に載せられていたもの。広い取材対象、行動力で鳴る著者だけのことはあって、ほとんど世界中の歴史問題に関するいろいろな対立と和解のプロセスが網羅されている。概観するだけでも、日本に関係する歴史問題について大きな示唆を与える。著者は、ヨーロッパにおける歴史和解(つまりドイツの戦争責任問題)を安易に日本に適用したり比較したりすることには賛成できないとしているが、どうもヨーロッパにおける歴史問題に関する著者の記述には薄さを感じる。ユダヤ人問題に関する著者の妙なユダヤ人に対する肩入れのせいか?反移民の極右に対するほとんど感情的な反発のようなものも感じる。どうも著者は、歴史問題に関してメインストリームになっている立場に深入りしすぎて、それ自体を相対化できていないように感じるのだが。