志士と官僚

佐々木克『志士と官僚』、講談社学術文庫、2000

幕末から明治にかけての「志士」を明治「官僚」と対比させることによって、維新の方向性がどう変わっていったのかを考えようとする本。1984年にミネルヴァ書房から出たものの再刊。本論の志士を論じる部分より、むしろ傍論の遷都論、新しい天皇像の形成、維新三傑の私生活についての部分の方がおもしろい。本論についていえば、明治官僚が藩士から明治政府の官僚へと変身していく過程に興味をひかれる。結局志士のままで終わった人々は新しい秩序を自分の中に積極的に取り込んでいくことに失敗した人々ということか。前原一誠の部分はそういう意味ではもっと細かく、彼の国家意識、秩序意識に注目して書かれてもよいと思う。