太陽

「太陽」イッセー尾形佐野史郎、ロバート・ドーソン主演、アレクサンドル・ソクーロフ監督、レンフィルム、2005

ずっと見たかったのだがやっと見ることができた。イッセー尾形昭和天皇役は歴史に残ると思う。「天皇」をこれくらい体現できた役者はいないだろう。侍従長役の佐野史郎や従僕、その他の日本人の「サーバント」たちはおよそ人間らしいものが切り取られた人達として描かれている。そういう中で昭和天皇が平家カニの標本に熱中したり、皇后の胸に寄りかかったり、進駐軍からの贈り物のハーシーチョコレートをめぐる騒動に「ハイハイ、チョコレートおしまい」と手を叩いていったり(ここは笑った)、というような形で、ひょこひょことキャラを出すところがいいインパクトを出している。

暗い防空壕の中から、明るい外に出てくるとアメリカ軍の兵士たちが騒いでいたり、敗戦のみじめさをからだで表現する東京の住民と天皇を護衛する米軍の車列、マッカーサー天皇、といったいろんなコントラストの連続として映画が作られていて、そういうところから天皇の人間である部分と人間でない部分の境目に光をあてる演出はとても巧い。最後に天皇は子供たちが待つ部屋に皇后とともに去っていくが、後には誰もいなくなった空間が残るだけである。