検証 日朝関係60年史

和田春樹、高崎宗司『日朝関係60年史』、明石書店、2005

北朝鮮の手先」扱いされて叩かれることの多い和田と高崎が、共産党社会党自民党、「帰国運動」、訪朝記、朝日新聞の社説などについて、その対北朝鮮姿勢が60年間でどう変わったかを、ゲストスピーカーを招いて研究会で検討した記録。ただし、ゲストスピーカーの発言内容は和田と高崎の原稿に組み込まれてしまっているのでナマの声はこの本ではわからない。スピーカーは、元職、現職の国会議員や朝日の論説副主幹、「世界」の編集長など当事者を呼んでいるので、直接証言を載せていないことは非常に惜しまれる。

記述には和田と高崎(特に和田)の自己弁護が随所に挿入されていて非常に見苦しい。また唐突に執筆者(和田と高崎)の事件に対する個人的評価が文章に紛れ込んでいて、読みづらい。二人とも一応研究者なのだから、事実の記述部分とそれに対する個人的評価を混同するような記述は(特にこういう資料的な性格をもつ本においては)やめてもらいたい。

こういう問題はあってもこの本の価値はあり、それは特に共産党社会党北朝鮮に対する態度がいつ、どのように変わっていったのかがだいたいわかるからである。また「日本朝鮮研究所」(つまりいまの現代コリア研究所」がどう変わっていったのか(とりわけ佐藤勝巳の態度)がよくわかる点も見逃せない。このようなことは当事者本人は書かないから、論敵が暴くことに意義がある。資料本として利用価値のある本。