明治国家の建設

坂本多加雄『明治国家の建設 日本の近代2』、中央公論社、1998

先年亡くなった著者の執筆意図は最初の部分で明らかにされている。「近代化論」「マルクス主義理論」などの大きな物語に即して語られてきた明治維新史を、当事者たちそれぞれの持っていた物語の競合という視点から、あらためて語りなおすことである。この著者の考えはかなり成功している。版籍奉還廃藩置県征韓論自由民権運動、立憲制の樹立といった問題について、当事者がどのような構想を持っていて、それらがどう対立していたかが明確に語られ、読者の問題に対する理解が非常に深められる。維新史について教科書的な理解しかしていなかった自分には特に学ぶところが多かった。こういう本が書ける人がまだ若いうちに亡くなったことは本当に惜しいことだと思う。