#伝記、自伝

ピカレスク 太宰治伝

猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』小学館、2018 電子版になったものを買ったが、これは傑作。表題は、太宰治その人が悪人であり、彼の生涯そのものがピカレスク・ロマンだったということ。 弱い人間で、だから3度心中し、5度自殺を企て、最後に死んでしまった…

評伝 小室直樹(上)

村上篤直『評伝 小室直樹』(上)、ミネルヴァ書房、2018 大冊。上下2巻で、1500ページくらいある。辞書みたい。 中身は最高におもしろい。小室直樹、著作は読んでいたが、「変人」ということくらいしか知らなかった。ただの変人ではなく、破天荒な人。 若い…

魯迅

藤井省三『魯迅 東アジアを生きる文学』岩波新書、2018 著者は、魯迅研究者。光文社古典新訳文庫で、「阿Q正伝」などの翻訳も出している。 魯迅の生涯については、だいたいまとまっている。魯迅作品の日本、朝鮮、台湾、ベトナムへの受容や、共産党政権下で…

李清照

徐培均(山田侑平訳)『李清照 その人と文学』日中出版、1997 宋代の女流詞人、李清照の伝記と作品解説の本。 李清照は、中国ではとても人気がある人で、ひとつは前近代で女流の文章家がめずらしいから。もうひとつは作品のレベルの高さ。さらに彼女が金に対…

私の戦後六◯年 日本共産党議長の証言

不破哲三『私の戦後六◯年 日本共産党議長の証言』新潮社、2005 不破哲三の回顧録に相当するものなのだが、これは角谷浩一がインタビューをまとめて本にしたもの。角谷浩一が、御本人のお話をとって、それをまとめ、不破哲三がまたチェックを入れて、というも…

紀州のドンファン 野望篇

野崎幸助『紀州のドンファン 野望篇 私が「生涯現役」でいられる理由』講談社+α文庫、2018 なんと著者が最近、覚醒剤で殺されてしまったというタイムリーすぎる本。前著は読んでいたのだが、続編が出ていたとはつい最近まで知らなかった。 二番煎じじゃない…

礼賛

木嶋佳苗『礼賛』角川書店、2016 木嶋佳苗の小説。ということになっているが、実際にはこれは自伝。裁判中(上告中)の段階で出版されているので、小説ということになっているが、実質的に自伝。この作品は、木嶋佳苗が、ネットで婚活を始めた時点で終わって…

チェーホフ

浦雅春『チェーホフ』岩波新書、2004 チェーホフの概説書。ボリュームは少ないが、いままで読んだ中で、一番なっとくがいった。 意味がありそうで意味のない会話をしている登場人物、感情の欠如、喜劇のスタイルで、悲惨な幕切れ。空回りする情熱。チェーホ…

この自伝評伝がすごい

成毛眞『この自伝・評伝がすごい』KADOKAWA、2017 書評サイトの主催者で経営者の著者による伝記の書評本。 カバーしているのは経営者、学者、スポーツマン・芸能人、政治家、歴史上の人物。 経営者のところは、確かにおもしろい。それから、スポーツマン・芸…

福田恆存

川久保剛『福田恆存』、ミネルヴァ書房、2012 「ミネルヴァ日本評伝選」の一冊。きちんと書かれている。 福田恆存は1912年(大正元年)生まれで、1994年(平成6年)に亡くなった人。評論はいくつか読んだことがあるが、肝心の劇作家、翻訳家としての仕事をほ…

オカマだけどOLやってます

能町みね子『オカマだけどOLやってます』竹書房、2006 この人は最近よく名前を見る人だが、この本のタイトルどおり、もと男、正確には「性同一性障害」で、男から女になった人だというのははじめて知った。もっとも著者は、「性同一性障害」と言ったり、言わ…

女子をこじらせて

雨宮まみ『女子をこじらせて』、ポット出版、2011 これもなぜ買ったのか、きっかけを思い出せない本。しかし内容は非常におもしろかった。帯に「全国のこじらせ系女子に捧ぐ!」とあって、本文にも「こじらせ系」という言葉が頻出する。だいたい「昔の悲惨な…

新人間コク宝

吉田豪『新人間コク宝』、コアマガジン、2010 吉田豪のインタビュー集。採録されている相手は、梅宮辰夫、木村一八、K DUB SHINE、月亭可朝、ジェリー藤尾、蛭子能収、長門裕之、ミッキー安川、生島ヒロシ、三遊亭楽太郎、赤井英和、大和武士、吉川銀二、新…

審判

田代まさし『審判』、創出版、2009 つい先日、二度目の実刑判決が確定した田代まさしの自著。基本的に『創』に連載していた記事をまとめたもの。なので、生い立ちから、最初の盗撮での「ミニにタコ」事件から、覚醒剤での最初の逮捕、二度目の逮捕、実刑判決…

吉田豪インタビュー 上杉隆 BREAK Max6月号

「吉田豪インタビュー 上杉隆さん」、BREAK Max6月号 この雑誌、BREAKMaxというのはBUBKAの姉妹誌で、つまりはセックスとゴシップ記事メインの雑誌なのだが、ツイッターでインタビュー記事が載っていることを知ってコンビニで買って読んでみた。これはむちゃ…

洞窟オジさん―荒野の43年

加村一馬『洞窟オジさん―荒野の43年』、小学館、2004 中学生、13歳で家出して以来、43年間社会を離れて、ひとり山中に生活していた人の半世紀。著者が自動販売機から小銭を盗もうとして捕まった時、新聞にこの人の驚異の人生について記事が出ていて、それを…

公安検察

緒方重威『公安検察 私はなぜ、朝鮮総連ビル詐欺事件に関与したのか』、講談社、2009 朝鮮総連中央本部売却問題にからんだ詐欺容疑事件で逮捕、控訴審公判中(一審有罪判決)の、元公安調査庁長官、広島高検検事長の著者による手記。 半分は、自分の半生につ…

アイドル墜落日記

小明『アイドル墜落日記』、洋泉社、2009 売れないアイドルで現在「アイドルライター」の著者による、底辺アイドルの日記帳。 最初にちょっと写真が出ている以外、全部文章。それも細かい活字(8pt?)でページの端ぎりぎりまで詰めてある。ページ数を圧縮し…

白洲正子自伝

白洲正子『白洲正子自伝』、新潮文庫、1999 白洲正子については、「趣味のいい人」という以外にほとんど知識がないのだが、この本はおもしろかった。いわゆる自伝の一般的な形式、つまり年代記のようなものではなく、自分の回りの人々や、折々にあった出来事…