新人間コク宝

吉田豪『新人間コク宝』、コアマガジン、2010

吉田豪のインタビュー集。採録されている相手は、梅宮辰夫、木村一八K DUB SHINE月亭可朝ジェリー藤尾蛭子能収長門裕之ミッキー安川生島ヒロシ三遊亭楽太郎赤井英和大和武士吉川銀二新沼謙治ビートきよし、金山一彦。

名前も含めてぜんぜん知らない人が四人くらい、ほかもそれなりに作品を見たり読んだりしているのは、長門、梅宮、蛭子くらいだが、ほとんど全部のインタビューがおもしろい。どういう基準でこういう人たちが選ばれているのかよくわからなかったが、とにかくやっていることがいちいち破天荒な人ばかり。

非常に笑えたのは蛭子さんで、オナニーするときに妄想の対象が何もなく、ただ手でこすっていただけという話。生き方が動物みたいだと言われたらしい。結婚の理由もセックスがしたかったからというだけだとのこと。まあそういう人はたくさんいるかもしれないが、はっきり口に出して言う人は、特に有名人となるといないだろう。杉作J太郎包茎手術に立ち会ったとか、いったい何してるのかという感じ。

他もいろいろおもしろかったのだが、巻末に長門裕之に二度目のインタビューをしたものがのっている。このインタビューは2010年2月14日となっていて、南田洋子が亡くなってからあまり間がないときのもの。ずっと南田洋子の話ばかりしていて、いい話だと途中まで思っていたら、途中でいきなり初体験は中学生の時で相手が男だったという話が出てきてすっかり目が醒めた。さすがは長門裕之。それにこのインタビューから、約1年で長門自身が倒れてしまい、それから3ヶ月で亡くなってしまったのだから、この時でなければインタビューは取れなかったかもしれないのだ。このタイミングでインタビューを取りに行っているところもさすが。

とにかく、吉田豪はインタビューしている本人がすっかり忘れているようなことをいろいろ知っているので、どんどんネタが引き出せる。「プロ・インタビュアー」というのはこういうものか。