評伝 小室直樹(上)

村上篤直『評伝 小室直樹』(上)、ミネルヴァ書房、2018


大冊。上下2巻で、1500ページくらいある。辞書みたい。

中身は最高におもしろい。小室直樹、著作は読んでいたが、「変人」ということくらいしか知らなかった。ただの変人ではなく、破天荒な人。

若い時から自信家で、野心満々。これくらいは珍しくはないが、このやりたいほうだいで、その後の人生をずっと乗り切っていったところがすごい。京大理学部、阪大経済学研究科、留学渡米(ミシガン大、MIT、ハーバード大)、東大法学政治学研究科という華麗な学歴だが、頭はよくても、先生とぶつかっているので、どこに行っても大変だった。

数学、経済学、社会学法社会学政治学などを修め、その内容をきちんと人に講義できたし、道具として使って分析もできた。教職にはつけなかったので、「自主ゼミ」という形で、授業料を受けずに学生を教えており、それも片手間ではなく、朝から晩まできちんとした講義の形で行っていた。これを40代半ばまで続けていたのだから、やはり大変なこと。

天才だから、人の目は気にしなかったということだろうが、将来の心配などなかったのだろうか。学問が好きなので、ただやり続けたという人。

著者の資料博捜も驚くべきもの。小室直樹が出版を始めてからは本があるが、それ以前のことは、人に聞くしかない。とにかく、あらゆる関係者に聞きまくった結果が、この伝記。弁護士のしごとをしながら、この本を書いたということだが、並大抵のことではない。