李清照

徐培均(山田侑平訳)『李清照 その人と文学』日中出版、1997


宋代の女流詞人、李清照の伝記と作品解説の本。

李清照は、中国ではとても人気がある人で、ひとつは前近代で女流の文章家がめずらしいから。もうひとつは作品のレベルの高さ。さらに彼女が金に対する徹底抗戦派で、いまで言えば「愛国者」だから。

恵まれた家庭に育ち、高い教育を受けて、夫も文人だったので、詞作と夫が打ち込んでいた金石学に力を注いでいた。しかしその後、夫は政争にからんで地方に飛ばされ、そのまま死去。李清照も、地方に逃れ、再婚したが相手は財産目当てで虐待され、ようやく離婚して、余生を送り、60歳から70歳くらいで亡くなった。

夫と生活していた一時期を除けば、あまり幸福な生活ではない。それだから創作に打ち込めたともいえる。

作品は、恋の詞などは少なく、古典の引用がひんぱんになされているので、本当の教養人。しかし、これは日本人にはわかりにくい。また、詞という作品の性格として、発音がわからないと価値がわからない。訳者が巻末でのべているとおり、口語訳の方がいいと思うが、これは訳者のちからによるので、なかなかむずかしい。

宋代の作品は、初心者にはとっつきにくい。もうちょっと他の作品を読んでから再読したほうがよさそう。