チェーホフ

浦雅春チェーホフ岩波新書、2004


チェーホフの概説書。ボリュームは少ないが、いままで読んだ中で、一番なっとくがいった。

意味がありそうで意味のない会話をしている登場人物、感情の欠如、喜劇のスタイルで、悲惨な幕切れ。空回りする情熱。チェーホフは、今読んでも、100年前に書かれたとは思えない。非常に今の日本っぽい。宗教的な要素がほとんどなく、社会改革にも距離をとっている。

この本はチェーホフの作品と、チェーホフの人生を組み合わせて、これ自体が作品になっている。四大戯曲の前のボードビルとのつながりがていねいに説明されていて、後期になる前の作品の重要性、ペンネーム時代の作風とのつながりもよくわかる。

やはりチェーホフは、四大戯曲や後期の小説だけでなく、できるだけその前の作品もあわせて読まないといけないもの。時間が出ないから、全集にはなかなか手が出なかったが、読めるだけのものは少しずつ読まなければ。とりあえず、この著者の翻訳は、古典新訳文庫に入っているので、できるだけ読む。