礼賛

木嶋佳苗『礼賛』角川書店、2016


木嶋佳苗の小説。ということになっているが、実際にはこれは自伝。裁判中(上告中)の段階で出版されているので、小説ということになっているが、実質的に自伝。この作品は、木嶋佳苗が、ネットで婚活を始めた時点で終わっているので、裁判の直接の対象になっている時期については書かれていない。しかし、この作品を読めば、木嶋佳苗がどのような経緯で、裁判の対象になっている事件までの人生を送ったかが書かれているから、だいたい裁判の対象になった事件に、どのように行き当たったのかはわかる。

若いうちに、年長の男と付き合っていて、性については知り尽くしており、その前も含めた親の教育で、基本的な知識の下地はできている。交際した相手は、だいたい金持ちだったり、経験の豊富な人なので、そこで人生経験の多くの部分は知り尽くしている。

見た目がブスだとか、いろいろ言われているが、このくらい経験値と教養があって、おもしろい話ができれば、男はつくだろう。そこらへんにいる、つまり、彼女のデートクラブでの相手のような男はセックスの相手にはなっても、まったく見限られている。人生経験を積みすぎたというのは言い過ぎだが、男を見切っている人で、自分の価値観が社会の規範を超越していると思うことも、この本を読めば納得。

本の最後の部分は、裁判について書かれており、精神的にかなり追い詰められていることがうかがえる。これはほぼ、彼女の遺書ということ。現在は死刑確定で、早期執行を希望しているので、執行は早いだろぅ。

生き急いだ人なので、人生は短いが、残された生を充実して送ってほしいと思う。