魯迅

藤井省三魯迅 東アジアを生きる文学』岩波新書、2018


著者は、魯迅研究者。光文社古典新訳文庫で、「阿Q正伝」などの翻訳も出している。

魯迅の生涯については、だいたいまとまっている。魯迅作品の日本、朝鮮、台湾、ベトナムへの受容や、共産党政権下での魯迅評価についても述べられているので、まあそんなに問題はない。

しかし、この本、どうも魯迅の作品そのものについての言及が薄く、魯迅作品の魅力がよく伝わってこない。どうせ短編ばかりなのだから、それは自分で読んでくれということなのかもしれないが、微妙。また、自分のことについての言及が多すぎる。半ばは魯迅研究者としての著者の自慢話を聞かされているみたい。さらに村上春樹との比較などいらない。作品の内容も時代も違い、どういう関係があるのかわからない。

魯迅の伝記で手っ取り早いのがこの本なので、それはいいとして、あまり読後感がよくない。